(2016.06.01)
シリア難民を多く抱える地域の公立学校の多くは、急増する難民の受け入れに対応するために二部制を導入しています。これらの学校では、午前はヨルダン人、午後はシリア人が学習していますが、半日授業では十分な学習とは言えません。
特に、シリア人の子どもたちの多くは、ヨルダンの公立学校に編入するまでに数年のブランクがあるため、勉強が遅れています。高学年の子どもたちはその影響を大きく受けており、ヨルダンのカリキュラムに慣れることができず、中退する児童が多いのが現状です。中退した子どもたちは、早期結婚や児童労働、性的搾取や犯罪集団、ひいては武装勢力への関与等のリスクにさらされてしまいます。
このような現状を改善し、教育の機会を奪われた、「失われた世代」(Lost Generation)を生じさせないためにも、教育は重要な道筋となっています。
さらに、シリア難民の子どもたちの中には、紛争の影響によるストレスを抱えている子どもが多くみられます。WVJが事業を行っている学校でも、一部の子どもたちに適応障害の症状が見られるケースが報告されていました。現在では、極端な反応を示す子どもは少なくなっていますが、それでも反抗的な態度や落ち着きがない子どもも報告されています。
多くの子どもたちが表面的には落ち着きを取り戻しているものの、子どもたちが置かれている現状を見ると、子どもらしく過ごせる環境や時間はほとんどなく、安らぎの場であるはずの家庭が多くのストレスを抱えているケースも少なくありません。過去に大きなストレスを受けた子ども、暴力等の過酷な状況を経験した子どもは、不安定な状態に陥りやすいこともあり、継続的なケアが必要です。
また、子どもたちを養育する保護者たちがこのような状態の子どもたちにどう接して良いか、戸惑う様子も多く報告されています。加えて、保護者自身も長引く避難生活により多くのストレスを抱えている状態です。
1)補習授業の運営
学校の授業についていくための学力を身に着けられるよう、アラビア語、算数、英語の補修授業をしています。授業後は、レクリエーション活動として、絵画、図工、詩の朗読、グループ遊びやスポーツをして過ごします。これらの活動は、子どもの自然な発達に有効であり、絵画や遊びを通して自分の考えを他の子どもたちと分かち合うことで自信をつけ、感情をコントロールし、日々の困難に対応する力をつけることを目指しています。
また、夏休みと冬休みには、普段は別々のクラスで学習しているシリア人とヨルダン人の子どもたちが、一緒にレクリエーション活動に参加。お互いの民族に対する差別意識を解消できるよう配慮しています。
2)子どもの保護体制を強化する活動
補習授業に通う子どもの保護者を対象に、子どもの養育に関する知識や子どもの前で取るべき態度やスキルに関する研修を行います。また、子どもの保護体制を強化するために、補習授業の教員と学校に常駐するソーシャルアドバイザーに対する研修を行い、保護者や学校との協力体制を作るための支援を行います。
3)冬物衣料の配布
冬になると気温がマイナスになることもあるヨルダン。補習授業を受ける子どもたちに、冬物のジャケット、靴下、靴を配布し、寒い時期でも学校に通い続け、勉強を続けられるよう支援します。
ヨルダンでは、逃れてきたシリア難民の子どもはもちろんのこと、多くの難民を抱える地域に暮らすヨルダン人の子どもも、困難を抱えながら暮らしています。
WVJが実施する補習授業やレクリエーション活動を通して、どちらの子どもも生活の中にやりがいや楽しみを感じられるよう、そして、そこから未来への希望が育まれるよう、これからも支援を続けていきます。
紛争の犠牲になり、平和を知らない子どもたちが
「教育」で未来への希望をつなぐため、シリア難民支援募金へのご協力をお願いします。