【故郷を追われた子どもたちや人々】希望の種をまく難民・国内避難民支援
バングラデシュ:激しい弾圧から逃れてきたロヒンギャの人々の半数は女性や子どもたち

(2023.06.16)

バングラデシュってどんな国?

南アジアに位置し、インド、ミャンマーと国境を接し、南はインド洋に面しています。日本の4割ほどの国土に約1億7,000万人が暮らしています。ベンガル人が人口の大部分を占め、イスラム教徒が約90%と多数派です。公用語はベンガル語。首都はダッカです。バングラデシュは近年、堅調な経済成長を続け、豊富で安価な労働力により、投資先・成長市場としても注目されています。しかしながら、いまだに人口の約24%にも上る貧困層を抱える「後発開発途上国」であり、経済インフラの未整備に加え、サイクロンや洪水といった自然災害に脆弱で、気候変動による影響を受けやすい国でもあります。
バングラデシュ南東部にあるコックスバザール県には、世界最大の難民キャンプであるロヒンギャ* 難民キャンプがあります。

*ロヒンギャ:現在のバングラデシュ・チッタゴン地域の方言に近い独自の言語文化を持つ民族。その多くがイスラム教を信仰し、ミャンマー・ラカイン地方に多くが集住している。しかし、ミャンマー政府の公式見解は「ロヒンギャはバングラデシュからの不法移民である」というものであり、激しい迫害を受けてきた。2017年8月以降にバングラデシュに逃れた難民の数は100万人を超え、未だにミャンマーへの帰還の道筋は立っていない。

バングラデシュの位置

子どもたちはどんな問題に直面しているの?

近年経済成長が著しいバングラデシュですが、特に農村部や都市部のスラムでは貧困層・最貧困層の世帯が多いのが現状です。洪水の多い地域では、家や家畜を失ったり、農地が水没して仕事を失ったりする人も多くいます。貧困率は年々低下してきているものの、家庭が貧しいが故に、中途退学し児童労働に従事したり、早すぎる結婚(児童婚)を強要されたりする子どもたちも少なくありません。また、5歳未満児の間で栄養不良率が高く、子どもたちの健やかな成長を阻んでいます。世界平均では発育阻害率** が22.0%、消耗症率*** が6.7%であるところ、バングラデシュ全国平均はそれぞれ28.0%、11.0%と世界平均を上回ります(世界栄養報告2022)。

このように、いまだに社会経済的な課題を多く抱えるバングラデシュですが、近年は深刻なロヒンギャ難民の問題にも直面しています。イスラム教を信仰するロヒンギャの人々は、2017年以降、隣国ミャンマーで激しい武力弾圧を受け、95万人以上がバングラデシュでの避難生活を余儀なくされています。その半数以上は女性や18歳未満の子どもたちです(UNHCR2023)。長期化する難民キャンプでの生活による不安や苛立ちは時に暴力として女性や子どもに向けられ、家庭内暴力は増加傾向にあります。文化的に女性は外出に制限があり、問題を他者と共有し支援サービスを受けることが困難です。児童婚や人身取引などの犯罪も増加しています。

**発育阻害:年齢に対する身長で評価し、長期的・慢性的な栄養不良状態を示す指標。発育阻害の悪影響は、身体や脳の発達の遅れ、免疫システムの低下、学業成績の不振、疾病リスクの上昇など、その子どもの一生涯におよぶ。

***消耗症:身長に対する体重で評価し、短期的・急性的な栄養不良状態を示す指標。必要な栄養が欠如しており、下痢やマラリアなどの病気に繰り返し罹患することで、免疫力のさらなる低下をまねき、死に至る可能性が高まる。

バングラデシュでこんな支援を行っています

ワールド・ビジョンでは、難民キャンプとホストコミュニティ(難民受け入れ側のバングラデシュ地域社会)において、女性や女子が尊厳や健康を回復し、安全な生活環境を築くため、啓発活動や生活必需品(生理用品、懐中電灯等)の配布、ケースワーカーによる日々の相談対応などを実施しています。「女性と女子のためのセンター」では裁縫教室などが開催され、女性と女子たちの憩いの場となっています。

加えて、男性や宗教リーダー、政府関係者や警察も対象に啓発や研修を実施し、地域全体で女性、女子、男子の保護環境の整備に取り組んでいます。

また、家計のひっ迫により日々必要な食料や生活必需品を手に入れることができない難民キャンプとホストコミュニティの人々に対し、緊急食料支援やe-voucher(イー・バウチャー、電子引換券)の給付、家庭菜園のための種子配布などを実施しています。これらに加えて、教員の再養成研修も行うなど、子どもたちの教育面のサポートも行っています。


「女性と女子のためのセンター」で実施している裁縫教室

支援事業担当スタッフから

支援事業部 開発事業第2課
シニアプログラム・コーディネーター 西島 恵(写真左)


「難民キャンプのある家庭を訪問した際、青年女子がいましたが、何の活動にも参加しておらず、危険であるため外出はほとんどしていないとのことでした。男性が家の外を通ると、彼女は奥に引き込んでしまいました。また、食料や物資の受取は夫のみの役割であるため、次の食料配布の予定さえ知らない女性もいました。
そのような中、本事業の取り組みにより、少しずつ変化が見られます。妻や娘の外出を許すようになった男性や、娘の児童婚をやめた宗教リーダーも出てきました。女性たちは悩み事があると『女性と女子のためのセンターを自ら訪れ、悩みを相談するようになりました。夫婦仲が良くなったという声もあがっています。将来の希望を見出せない難民キャンプにいても変化しているということは希望の現れであり、彼らの生きようとする力に心を揺さぶられます」

難民支援募金にご協力ください

6月20日は「世界難民の日」です。難民・国内避難民となって故郷を追われた子どもたちや人々は、史上初めて1億人を超えました(UNHCR2022)。子どもたちは学びや遊びの機会を奪われ、恐怖と隣り合わせの日々を過ごしています。

ワールド・ビジョン・ジャパンは、緊急支援から復興への取り組みまで"今、最も必要な支援"を子どもたちに届けます。

厳しい環境下で避難生活を強いられている子どもたちを守り、回復を支え、未来を築くために、難民支援募金にご協力ください。

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