(2021.04.19)
多くの人にとって、携帯電話は日常生活に欠かせないものであり、ソーシャルディスタンシング(社会的距離)が求められているコロナ禍では、携帯電話はますます生命線となっています。
世界の最も貧しい地域でも、ほとんどの人が携帯電話を持っており、開発途上国の成人の83%が携帯電話を持っているのに対し、先進国では94% (出典:ピュー・リサーチ2019年)。また、全世界の携帯電話利用者数は50億人以上で、人口78億人のうち半数以上がインターネットに接続できるスマートフォン(Global Digital reports 2018年)を利用しているというデータがあります。
そのため、ワールド・ビジョンが子どもたちの支援活動をしているような地域であっても、携帯電話を持っていることが普通の光景として見られることがあります。
でも...なぜ?
このことに戸惑いを感じる方もいらっしゃるかもしれません。子どもたちのために食べ物や学費、電気、あるいは衣類を得るのに苦労している家族が、なぜ携帯電話を持てるのだろうか?と。
今回のコロナ禍のような状況で、現地スタッフは、携帯電話が貧困家庭にとっていかに重要かを改めて実感することとなりました。
世界中で携帯電話を使って情報を見つけたり、ロックダウン(都市封鎖)や仕事の継続のために遠く離れた大切な人と連絡を取り合ったりすることができるようになりました。
開発途上国では、ロックダウン(都市封鎖)発令後数時間でロックダウン(都市封鎖)が施行され、政府が財政的支援を提供できなかったため、携帯電話は家族が共有する唯一のライフラインであることが多く、家庭で学ぶ子どもたちのための教材であり、ワールド・ビジョンなど、援助を行うことができる基本的な組織にアクセスする手段でありました。
携帯電話を使用して、親や保護者に新型コロナウイルス感染症予防と子どもの保護について話をし、子どもたちが安全であることを確認できるように、ビデオチャットで子どもたちと連絡を取り、地域の医療従事者に症例の特定と管理の方法を訓練し、日々の必要を満たそうと奮闘している家族に、現金引換券を渡し、子どもと親に心理社会的カウンセリングとサポートを提供するなど、さまざまなことを行いました。
しかし、新型コロナウイルスが登場する以前から、貧困家庭の多くは携帯電話を生活の中で優先すべきものとみなしていました。
私たちはケニアからスリランカまで7カ国のスタッフから話を聞き、携帯電話が生活必需品である理由を5つ紹介します。
多くの人にとって、スマートフォンを買う時に、費用の心配があります。それもどんなスペックなのか気にしているとなおさらです。しかし、開発途上国では、携帯電話は基本的なモデルであることが多く、インフラを必要とする固定電話よりもはるかに安価です。
メキシコでは、携帯電話を月額わずか3ドルのプランで購入できます。また、基本的な携帯電話の価格は、アルメニアでは7ドルから10ドル、ニカラグアでは20ドル、ミャンマーでは30ドル、西アフリカでは15ドルから60ドルです。
中古電話はさらに安く、多くの雇用主が古い電話をスタッフにプレゼントします。通話料金も手頃に設定されており、モンゴルでは通信会社が12歳未満の親子間の無料通話サービスを提供していたり、ホンジュラスでは100分の通話時間がたったの 1ドルです。
「アフリカは、一人当たりの電話の数が、ほかより多い大陸として知られています。とても矛盾していますよね。ほとんどの電話は非常に低価格のもので、遠く離れた村でさえ、ほとんどすべての人や家族が携帯電話を持っています」(ワールド・ビジョン・西アフリカのアンリ・コリー氏)
どこの国の親でもそうですが、開発途上国の親も、子どもがそばにいないときは、子どもの安全を心配します。親が働いている間に、学校まで長距離を歩いたり、家で長時間過ごしたりする子どももいます。
携帯電話があることで、子どもは必要なときに助けを求めることができ、親は自分の子どもが無事であることを確認できるので、安心することができます。モンゴルでは、子どもたちが問題や暴力を報告するための児童相談所までオンラインで開設しています。
「携帯電話はぜいたく品ではなく必需品です。親は安全上の理由から、子どもにシンプルな携帯電話を持たせます。特に子どもが学校に通い始めて一人で家に帰ってくるようになると、いつでも子どもと連絡を取ることができるので、子どもの安全を確認することができます」(ワールド・ビジョン・アルメニアのマデレン・ムラデレン氏)
雇用機会が限られている地域では、多くの家族が少なくとも家族のうちの1人は家を離れて暮らし働いており、連絡を取り合う唯一の方法は電話をかけることです。
ホンジュラスやそのほかの多くの国では、海外で働く労働者用に通信会社がアメリカやメキシコに国際電話を安くかけられるようなサービスを提供しています。中国、ミャンマー、モンゴルのように、学校の学期中に子どもが親戚の家や下宿に泊まるのが一般的な国では、親は携帯電話を使って子どもと連絡を取っています。
「中国の農村地域では、すべての世帯が固定電話を利用できるわけではありません。ほとんどの世帯は携帯電話を持っています。これは、携帯電話のネットワークがほぼどこからでもアクセスできるためです。そして、多くの親が町の外で働いていて、家に残っている子どもたちと連絡を取るために携帯電話を使います」(ワールド・ビジョン中国のメイベル・ツァン氏)
「学校が家から遠かったり、寄宿学校の寮に住んでいる子どもたちが携帯電話を使用することもよくあります。モンゴルは中国と国境を接しており、製品や商品の大半は非常に安い価格で、中国からのものです」(ワールド・ビジョン・モンゴルのナランマンダク・バダーチ氏)
新型コロナウイルス感染症の影響が出る前から、インターネットは開発途上国を含む世界中の子どもたちにとって、ますます重要な学習ツールになっています。ドミニカ共和国やエルサルバドルのような国では、家庭でコンピュータにアクセスできない子どもたちが、宿題をするために親の携帯電話で安価なインターネットパッケージを使用するのは一般的なことです。
この傾向が拡大しているので、ワールド・ビジョンは、チャイルド・スポンサーシップを実施しているほとんどの国で、子どもと親にサイバー・セーフティに関する特別なトレーニングを実施しています。
「私たちが働いているドミニカ共和国のほとんどのコミュニティでは、携帯電話は子どもの母親か父親のものですが、子どもはそれを使って宿題をします。地域の子どもたちは、宿題で調べ物をする時、インターネットのつながったコンピュータにアクセスできないため、彼らの両親は、携帯電話でインターネットにつながれるよう一日あたり1ドルの無制限プランを購入しています」(ワールド・ビジョン・ラテンアメリカ・中米のシャロン・ロドリゲス氏)
今の子どもたちは、ほとんどの人が携帯電話を持っていることを知っています。ちゃんとした制服を着ていないことや、必要な教科書が無いこと、住んでいる場所や親の仕事のことで他者からどう思われるかと日々悩んでいる10代の若者にとって、友だちに電話したり、ソーシャルメディアで繋がれないことは、彼らの社会的孤立を悪化させる可能性があります。親は子どもが社会的に孤立しないよう、衣服や靴を与えるように、携帯電話を持たせます。
「子どもを含むほとんどの人は、自分たちが貧困状態にあることが周りに知られないよう振る舞います。携帯電話は、仲間とのある種の平等感を感じられるアイテムです。ほとんどの携帯電話は中古品で価格も安いですが、インターネットへのアクセス、カメラ、タッチスクリーンなど、主な機能を備えています」(ワールド・ビジョン中東・東欧のケイト コバイゼ氏)
「もし、携帯電話がお金持ちの人たちの生活を、より良くするための優れた道具なのであれば、自分たちも同じように利用できるべきとブラジルの貧困層や社会的弱者の多くは考えています」(ワールド・ビジョン・ラテンアメリカ・中米のシャロン・ロドリゲス氏)