(2016.11.14)
「子どもたちは、何かを話そうとして、やめる。何も言わずに、震えている」
モスル市から25キロ離れた避難民キャンプで活動をしているワールド・ビジョンスタッフは、そう話します。
2年間、支配下に置かれ、地雷やスナイパー(狙撃者)、銃撃戦などの危険に晒されながら逃れてきた子どもたちは、心身ともに虐げられ、大きな傷を負っています。
イラク北部の事業マネージャー、アーロン・ムーアは次のように話しています。
「今、ここにいる子どもたちは、2年間の子ども時代を奪われただけでなく、恐ろしい経験をさせられている。多くの子どもたちが、爆撃や射撃などのカオス状態に怯えながら、家に閉じこもっていた。家族の死を目撃した子どもも少なくない。
ある5歳の男の子は、逃れている最中、15歳のお兄ちゃんが殺されるのを見てしまったショックから、話せなくなっていた。
ワールド・ビジョンの経験のある心理カウンセラーがケアにあたり、その日が終わるころには、自分の名前だけ言えるようになった。
しかし、これはほんの序の口だ。子どもたちが、子どもらしい生活を取り戻すために必要な長いプロセスは、これから始まる。」
ワールド・ビジョンを含む多くの支援団体が、緊急支援の一部として、チャイルド・フレンドリー・スペース(CFS)の設置を急いでいます。CFSは、子どもたちが心理的ケアを受けながら、安心して過ごし、「ふつう」取り戻すための場所で、子どもたちは、お絵かき、ゲーム、スポーツなどをして過ごします。
「CFSに初めてくる子どもたちが描く絵は、戦闘車や戦闘機など、戦争中に見たものを再現している。しかし、スタッフと数日過ごすうちに、少しずつ安心や将来への希望を取り戻しているようにみえる。」ムーアはそう語ります。
10月17日以降、モスル市内から逃れた2万人の多くが、避難民キャンプに助けを求めています。戦闘が激化するにあたり、安全な脱出ルートの確保と迅速な人道的支援は、引き続き、最優先事項です。
モスル市を逃れる人は70万人にものぼると見込まれており、ワールド・ビジョンは、24時間体制で、食糧や安全な水の準備をすすめています。
今後も、イラクの状況を注視し、迅速な支援を行っていく方針です。