(2016.10.11)
カリドくん(3歳)。モスルから45km離れた町から、家族と一緒に逃げてきました。町を占拠した武装勢力に「逃げたら殺す」と脅されていたため、2年間も閉じ込められていました。夜中、命がけで逃げたところを保護され、現在は国内避難民キャンプで暮らしています。
2014年から激化しているイラクでの紛争により、多くの一般市民が巻き込まれ、犠牲となっています。国内の紛争に加えて、5年以上に渡って続いているシリア内戦による難民も受け入れているイラクの人道危機は、深刻さを増しています。
【イラクでの紛争がもたらしている影響】
・330万人が国内避難民としての生活を余儀なくされている
・イラクの人口の約3600万人のうち1000万人が何らかの支援を必要としている
・今後数カ月で、さらなる100万人が人道的支援を必要とする可能性が高い
・約25万人のシリア難民がイラクのクルド地域に避難していることが、限られた資源しかない受入れコミュニティにとって負担となっている
さらに今、イラク第2の都市、モスルを武装勢力から奪還するため、イラク軍による軍事作戦が計画されています。
この軍事計画が現実のものとなれば、約100万人が新たにモスルから逃れて、国内避難民となることが想定され、過酷な冬の到来とも重なり、大規模な人道支援が必要となることが懸念されています。
多くの子どもたちは、何も持ち出せずに家を追われました。不安定で不衛生な生活を強いられているため、学校には通えず、様々な形態の暴力にさらされています。夏は、高温による脱水症状が見受けられましたが、目前に迫る冬には、十分な衣服や仮設住居内に暖房器具がないことが風邪や肺炎などの原因となり、命取りとなることもあります。
また、紛争中、子どもたちは直接危害を加えられたり、家族が殺され、家や地域が破壊されるのを目の当たりにしています。そうした経験の恐怖による心の傷とも戦っています。
紛争から避難している人が必要とするのは、安全な水、食糧、住居、衛生用品、寝具などの基本的な生活用品です。また、心臓病や糖尿病などの持病や、貧困によって引き起こされる栄養不良、コレラ、下痢などに対応するための薬や医療設備も欠かせません。
ワールド・ビジョンは、2014年8月より、イラクの人道危機に対して支援を開始し、クルド人自治区で暮らす約100万人に以下の支援を届けてきました。
・安全な水へのアクセス
・保健サービス
・教育プログラム
・子どもの保護プログラム
・無料食糧配布
・もっとも弱い立場にある家族への現金支援