(2023.03.01)
2月28日(火)の夜、現在中東ヨルダンに駐在し、シリア北西部における支援事業を担当している渡邉裕子スタッフが登壇し、トルコ・シリア大地震緊急援助について報告しました。オンライン報告会には、日本全国また海外からも 181名の方にご参加いただきました。
大地震から約3週間が経ちましたが、今なお被害の全容さえ明らかでないシリア北西部。今回の震災前から、10年以上におよぶ紛争の影響を受けていた地域です。被災地の子どもたちが今どのような状況に置かれているか、支援現場がどうなっているか、今後どのような支援が求められているか。2015年3月からヨルダンに駐在し、ヨルダンとシリア北西部における教育、水衛生、栄養分野等のシリア避難民支援事業を担当、今、シリア北西部の人々への緊急援助にも従事している渡邉スタッフから報告し、ご参加いただいた皆さまからは多くの質問をお寄せいただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
Youtubeにて見逃し配信を行っています。
OCHA(国連人道問題調整事務所)によると、2月22日現在で、シリア北西部で4,500人以上が今回の震災で命を落とし、8,500人以上の方が負傷されたとされています。しかし、がれきの撤去が進んでいないので、死者はまだ増えることが懸念されています。 シリア北西部では1万棟以上が全半壊し、多くの人々が家を失いました。
シリア北西部は今回の震災の前から10年以上におよぶ紛争の影響で非常にぜい弱な状況でした。現在450万人が暮らしていますが、うち、290万人が国内避難民です。発災前から、地域内の97%の人々が貧困ライン以下で生活している状況で、410万人が人道支援を必要としていました。紛争による経済破綻に加え、感染症や通貨の急落、また、ウクライナ危機の影響で、激しい物価の高騰が、人々の暮らしをさらに追い詰めている、非常に厳しい状況でした。
かねてよりシリア北西部地域で活動を実施していたため、発災後すぐに初動調査を行い、発災から2時間後には喫緊に必要とされる暖房器具や燃料の配布を開始することができました。
その他にも、凍える寒さをしのぐための防寒着、仮設テントの支援などを行いました。
支援はいくつかの段階に分かれており、緊急人道支援や早期復興に留まりません。生活を立て直せるようにしてから、最終的な復興につなげる必要があります。緊急人道支援から復興までの支援を切れ目なく行うことが重要です。
まずは、命を取り留めた方が生きながらえるために必要な生活必需品、仮設施設、水衛生、現金給付、医療支援等を現地提携団体と協力して行います。物資の調達が非常に困難ですが、支援を拡大する予定です。
【感染症対策】
シリア北西部では昨年9月にコレラの大感染が宣言されており、感染が疑われるケースも含め、5万例近くが報告されています。地震発生後も、4,800件ほど増えています。今回の震災で避難している人たちによって避難場所の人口密度があがり、もともと下水や汚水に課題があった場所でさらなるコレラやその他の水を介する感染症の感染が懸念されています。こうした感染症に対する活動に力を入れる必要があります。
【食料支援】
必要な量の食料がいきわたっておらず、栄養不良に陥っている子どもの数が増えていると報告を受けています。そのような状況で、コレラ等の感染症にかかってしまうと命が危険にさらされてしまいます。
ウクライナ危機の影響で価格高騰の影響をシリア北西部でも受けています。例えば、当初625人分の食糧や支援物資を調達予定でしたが、その予算では440人分しか調達できないなど課題に直面しています。皆さまのご寄付をお預かりして進める活動をどのように効果的に展開し、支援を求める人々にどのように届けるか、現地の提携団体などと知恵を出し合いながら支援を進めていきます。
渡邉スタッフからご参加の皆さまに、報告の終わりにあたり次のように語りかけました。
「私自身、発災後数日間、『差し入れでいただいたピザ、今日は何切食べたんだっけ?』とわからなくなっていて少し怖いな、と感じました。ヨルダンでは、息抜きにカフェでおいしいコーヒーとケーキを食べることもあるのですが、現場、特にシリア国内にいるスタッフは24時間、余震や寒さで眠れない、暖かい飲み物なんて手に入らない状態で支援活動を行っています。
肉親がずっとがれきの中にいて、結局妹さんをそのご家族もろとも亡くしてしまった同僚もいますが、肉親が行方不明な状態のとき、また死亡が確認されてもプロとして、支援を必要としている方々のために献身的に働いていて、頭が下がる思いです。現場スタッフが日本のみなさまからお預かりした募金で支援をどのように届けようとしているか、ぜひ知っていただければ思います。
今後シリアには、緊急人道支援から復興まで、息の長いサポートが必要だと思います。シリアの方々や同僚からは、震災前から日本のみなさまからのご支援に対する感謝の声を聞いています。今回も、日本のみなさまが被災地の方々のことを思っていると知ったら、どんなに喜ぶだろうかと思います。皆さまの応援とご支援を、引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
内戦でもともと410万人もの方が支援を必要とされていた中の地震、命の危機にある方がどれほど多いか改めて心配になりました。心から応援しております。どうぞ健康に留意されて活動なさってください。