【4月22日はアースデイ】気候変動とたたかうケニアの「スーパーキッズ」

(2022.04.18)


地球温暖化が進むにつれ、若者による温暖化防止運動が活発になっています。グレタ・トゥーンベリさんの素晴らしい活動はよく知られていますが、たとえ目立たなくとも気候変動対策は各地で進んでいます。例えばケニアでは、気候変動とたたかうために、故郷の森林再生に貢献し、素晴らしい成果を上げている子どもたちがいます。

気候変動については、世界で最も若く、最も貧しく、最もぜい弱な立場にある人々が、一番の影響を受けるという衝撃的な事実があります。気候変動の原因にはほとんど関係していないにも関わらず、数億人もの子どもたちが、激しさを増す嵐や深刻化する干ばつ・洪水、環境悪化のリスクにさらされる危険な世界に直面しているのです。

彼らは誰も、世界的な危機の真っ只中で生きることを選んだわけではありません。しかし彼らは皆、自分たちの未来がかかっているからこそ、行動しています。

ケニアに住む19歳のルースさんにとって、気候変動は2030年や2050年に対処すべき抽象的な概念ではなく、現実に存在しているもので、目に見える影響をおよぼしているものです。「気候変動のために、私たちは動物や作物を失い、川は干上がり、人々は牧草地を求めてあちこち移動しなくてはなりません。飢きんで命を落とす人さえいます」と、彼女はいいます。

ほかの開発途上国と同様、農業は命と生活の基盤です。しかし、雨が降らなかったり記録的な猛暑で作物や家畜が死んだりしたら、どうなるでしょうか?東アフリカにあるこの国では、森林伐採、過放牧、砂漠化等の様々な環境問題に、数十年前からすでに対処してきました。気候変動の影響も大きくなり、コミュニティは、生き残るために何か新しい取り組みを始める必要に迫られています。

これまで、森林再生プログラムの導入はうまくいかず、20年間で約6,000万本が失敗に終わりました。植えてから数週間もしないうちに、家畜に食べられたり、異常気象で枯れたりしたのです。

地域の人とFMNRに取り組むルースさん
ワールド・ビジョンのプロジェクトリーダーたちは、地元の農家と協力しながら、偶然にも広大な「地下林」が眠っていることを発見しました。地上では小さな低木にしか見えなかったものが、実は、地中で古い木の根を伸ばそうとしていたことに気が付いたのです。そこで、植林ではなく、地中に眠っている植物の管理に焦点をあて、FMNR*という手法を生み出しました。

今、ルースさんは、他のメンバーとともに、森林の回復や気候変動対策に取り組んでいます。環境が改善されたことで、彼女自身を含む地域の子どもたちは、子ども時代を楽しみ、これまでとは違う未来を夢見ることができるようになりました。

「FMNRのチャンピオンとしての私の役割は、学校や家のまわりにある木の手入れをすることです」と、ルースさんは言います。FMNRは単なる手法ではなく、ルースさんのような若者や子どもたちにとっては、命綱なのです。土地の回復は、単に土壌の質と生産性を向上させるだけでなく、炭素排出量を減らし熱や蒸発を抑制することで、気候への影響を直接緩和します。ほかにもメリットがあります。

「十分な食事ができるようになったので、私たちは学校を休まなくなりました。成績もアップしました。FMNRの区画から簡単に薪を手に入れることができるので、勉強や宿題をする時間も十分にとれます」と、ルースさんは付け加えました。

ワールド・ビジョンの使命は、人々が生き延び、復興し、次の世代のために命と生活を維持できる未来を築く手助けをすることです。FMNRは、気候変動の危機を解決するためにとられる多くの手法のうちの一つに過ぎません。しかし、より良い未来を作るために、最悪の影響を受けたコミュニティとともに、そしてそのコミュニティのために、私たちができることの大切な一部なのです。

ルースさんは、世界中で気候変動対策の強化を求める多くの若い活動家と同じように、彼女独自の、そして非常に効果的な方法で、世界的な運動に直接参加しているのです。


*Farmer Managed Natural Regeneration (FMNR)

農家の手で管理される自然再生の方法。低コストで始められ、また貧困や飢餓に苦しむ農家自身が行うことでレジリエンス(回復力)を高められるとされる。伐採された木の切り株から芽を育てるなどして森を育み管理することで土壌の回復や生物多様性を促進し、農家は作物を収穫・販売できるようになる仕組み。詳しくはこちら(英語

「FNMRの手法で土壌の回復に努めた結果、収穫量が大きく改善しました」(ルワンダ)