ウクライナの子どもたちを支援する3つの方法 ―現地からの報告

(2022.04.11)

ヤシにある一時避難センターを訪れたジュリアン(中央)

-------
ルーマニアとモルドバで支援事業の立ち上げを担った、ワールド・ビジョンの中東・東欧地域の緊急人道支援担当ディレクター、ジュリアン・スロデッキからの報告が届きました。(ワールド・ビジョンの支援について詳しくはこちら
-------

どのような人道危機であれ、最初の数週間は混沌としています。自然災害、人為的災害を問わず、災害時の状況というものは非常に流動的だからです。多くの変動的要因によって、目まぐるしく変化しています。

ワールド・ビジョンのような人道支援機関にとって、最初の数週間は、差し迫ったニーズに対応しながら、中短期的に何が最善の支援なのかを熟慮すべき時間です。私はウクライナ国境で支援活動を行う中で、ワールド・ビジョンの同僚、パートナー、国連機関、地方自治体等とともに、現地のニーズは何かという点を話し合いました。特に、難民の方々をサポートするために、現地の市民社会や難民を受け入れる国の政府の取り組みに対して、ワールド・ビジョンが最も役に立つことができる分野を話し合いました。そして、おもに次の3つが、私たちの緊急支援の重点分野になると考えています。

現金/バウチャープログラム

多くの緊急支援において、難民や国内避難民の方々に現金やバウチャー(引換券)を渡すことで、彼らが最も必要としているものを購入してもらうことができます。現金/バウチャーはより多くの選択肢を広げることができますし、数日前または数週間前までは自分で子どもを養うことができただろう大人たちを助けることができます。

あなたも親の立場になって想像してみてください―もし子どもに与えるすべてのものが支援機関から提供されていることを子どもが知ったら、親としてどう感じますか?親に現金を支援することは、家庭生活において親に対する信頼を維持することを助け、親が子どもへの衣食を提供する主要な存在であり続けることを可能にします。

現金/バウチャーをどこでどのように提供するかを検討する際には、市場が機能しているかどうかを注視する必要があります。市場が機能していなければ、この支援が価格高騰につながる可能性があるからです。人々がお金を持っていても売り物が少ないので、価格が上がってしまうのです。できる限り現金支給を採用する必要がありますが、今般の危機によるウクライナのインフラとサプライチェーンの破壊を考えると、食料や商品が手に入らない人々に直接物資を届けることに、もっと前向きにならなければなりません。

ウクライナ国内へ食料を届ける準備をするワールド・ビジョンのスタッフ

現地のパートナーの補完

どのような危機においても、すべての組織は、影響を受けるコミュニティのニーズを最もよくサポートできるものは何かを考える必要があります。多くの場合、危機の前からそこにあった組織は、迅速に行動でき、現地と関係を確立しており、複雑な現地の力学を効果的に処理できるスタッフを擁している可能性が高いため、支援活動を進めるのに最適な立場にあります。

危機の影響を受けたウクライナ、ルーマニア、その他の国々での市民社会の動きは驚くべきものでした。ルーマニアとモルドバでは、ワールド・ビジョン・ルーマニアを含む現地の人々が速やかに行動し、物事を成し遂げるために懸命に働いていました。私はその姿を目の当たりにし、感銘を受けました。

現地の市民社会が運営するトランジット・センターを訪れたジュリアン。寄付されたおもちゃやオムツ等も確認できます
先日、自治体や現地のボランティアが設置した、1日400人の避難民を収容するトランジット・センター(ルーマニア)を訪ねました。現地の市民社会は、同センターが必要とするすべての食料と物資を提供するという素晴らしい活動をしていました。ワールド・ビジョンは、彼らの活動を強化するための最善の方法を検証しています。たとえば、私はボランティアの責任者に、災害や紛争等の被災者に対する人道的行為の国際基準「スフィア基準」について話し、他国での支援経験に基づいていくつかのアドバイスを共有しました。ワールド・ビジョンは、トランジット・センターのボランティア管理者の大きな懸念事項であった、同センターの公共料金を3カ月間負担し、運営を支えました

またワールド・ビジョンは、ルーマニアで30年以上にわたり子ども支援に取り組んでおり、その経験をいかして、センターのボランティアスタッフに、子どもの保護に関する研修を行うことができました。現地の市民社会の活動を補完する適切な方法を見つけることは、そのニーズが高まり、支援が中期におよぶにつれて、ますます重要になります。


性的搾取と虐待からの保護、そして子どもの保護

難民のほとんどが、子どもをもつ女性です。突然、家から逃げなければならなくなり、言葉も通じない場所で、周囲に弱い立場にあることを知られながら、いくつもの国境を越えて避難しなければならないことを想像してみてください。ワールド・ビジョンは、ホテルからホテルへとヨーロッパ中を移動する女性が、グルーミング(のちの性的搾取を目的として接近し懐柔すること)や搾取の危険にさらされることを懸念しています。

この件について私たちは、心配し、調査も進めています。ワールド・ビジョンはすでに、ぜい弱な難民の安全を確保するためにできることを行うべく、権利保護の専門スタッフを動員して活動しています。また、子どもや若者が虐待や人身取引の犠牲にならないよう、子どもや若者をどう教育していくかについても検討していく予定です。他の仲間と一緒に学ぶことは、難民の子どもたちや若者の精神的・感情的な健全さにも役立ちます。

「子どもが乗っています」というサインを貼り付けて避難する車
ワールド・ビジョンは、すべての弱い立場にある人々を守るために活動していますが、そのおもな焦点は、最もぜい弱な立場にある子どもたちにあります。子どもたちがこの紛争による危険にさらされているという証拠が必要だと言われれば、この写真(上)が確かにそれを証明しています。家を強制的におわれ、車に乗り込む前に「子どもが乗っています」と兵士に伝えるサインを貼らなければならないこの悲惨な状況を、想像することができますか?

モルドバとルーマニアを移動する間、私はこのようなサインを数多く目にしました。私は、ひとりの母親が我が子を守るために大きな犠牲を払うように、すべての子どもたちが紛争から守られなければならないことを強く思い知らされました。

ウクライナ危機で活動した時間を振り返ると、中東・東欧地域の難民の方々を支援したいという思いがさらに強くなりました。ウクライナ、シリア、アフガニスタン等、紛争の影響を受けている子どもたちは、私たちの支援を必要としています。

募金を受け付けています

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、紛争等の影響により、危機的な状況にある難民・国内避難民を支援する「ウクライナ緊急支援募金」を受け付けています。皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。

関連記事