【開催報告】子どもの権利条約フォーラム2019

(2019.12.6)

のべ600人の参加者と考えた「子どもの権利」

2019年は、「子どもの権利条約」が国連で採択されてから30年、日本が批准してから25年の節目の年にあたります。

ワールド・ビジョン・ジャパンは「大切な『子どもの権利』と『子どもの権利条約』について、もっと日本社会に広めたい。もっと子どもにやさしい社会、世界にしたいと願い行動する人を増やしたい」との思いから、この節目の年に、国内外で子どもの権利や子ども支援に取り組む市民団体等とともに、「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」を立ち上げました。


このキャンペーンの一環として、2019年11月16日(土)・17日(日)、「子どもの権利条約フォーラム2019」を他団体とともに開催。両日とも300人を超える参加者が集い、シンポジウムや分科会、ランチセミナーなどの様々な企画を通じて、子どもの権利やその実現に向けて何ができるか等をともに考えました。

ここでは、ワールド・ビジョン・ジャパンが企画担当した「多文化共生」「災害と子どもの権利」の分科会と、開催協力した「セーフガーディング」の分科会の様子をご報告します。

分科会「多文化共生~外国にルーツのある子どもたち」

企画担当:ワールド・ビジョン・ジャパン
日時:11月17日(日)9:30~11:30

在留外国人の増加や定住化とともに、日本に住む外国籍の子どもの数は増加傾向にあります。日本国籍をもつ子どもを含めると、40万人以上の子どもたちが外国にルーツをもち日本社会で生活しています。国籍をめぐっては、そもそもの地位の保障に加えて教育や社会保障、労働などの障壁がある一方、言葉や文化のうえでも、学校や地域社会との統合がうまくいかない例も多く、根深い差別や偏見などの様々な課題があります。

この分科会では、そのような外国にルーツのある子どもたちの教育や社会保障、異なる言語や文化についての権利をどのようにして守るかをテーマに、当事者である子ども自身と学習支援や居場所支援を行っている方々に登壇いただきました。

分科会の様子
登壇者の一人は、「小学校6年生になってからは内戦でほとんど学校には行っていなかった。来日して地域の学校に通い始めたが、地域で日本語や生活について教えてくれた近所の方の存在が大きな支えだった。また、学習の機会を与えてくれたNPOや理解ある学校の先生にも助けられた」「(今の学校を)卒業したら、今度は自分が日本で暮らす外国にルーツのある子どもたちの支援に携わりたい」と語ってくれました。

地域で日本語を母語としない子どもたちの学習支援、居場所支援を行っている登壇者からは、「地域だけではカバーしきれないことが多く、国家レベルの政策が必要」という提言がありました。

参加者からは、「当事者の実際の体験に基づく話が聞けて良かった。」「外国にルーツのある子どもたちと保護者への支援は、自治体、NPOや教育研究機関などが連携してすることが重要だと理解できた」といったコメントがありました。

ワールド・ビジョン・ジャパンでは、関係する団体・機関と連携しつつ、外国にルーツのある子どもたちの権利についても視野に入れて国内での活動を検討・展開する予定です。

分科会「災害と子どもの権利~子どもにやさしい空間(CFS)を通じて~」

企画担当:ワールド・ビジョン・ジャパン
日時:11月17日(日)13:00~15:00

この分科会は、ワールド・ビジョン・ジャパンが日頃から連携・協力している、特定非営利活動法人災害時こどものこころと居場所サポート、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと協働して実施しました。

災害などの緊急時には、家庭・学校・遊び場・地域などの環境が大きく変化し、学ぶことや遊ぶことなどの様々な子どもの権利が侵害されやすくなります。そのような時にも子どもの権利を保障するためのひとつの方法として、国内外の災害支援現場で「子どもにやさしい空間(Child Friendly Space : CFS)」が設置されることが増えています。大規模な災害が多発する近年、災害時に子どもの権利を保障することの大切さ、その具体的な方法、そして日頃の備えを通じて誰もがその担い手になれることを、「子どもにやさしい空間(CFS)」のご紹介を通じてひとりでも多くの方に伝えたいと考え、この分科会を企画しました。

子どもにやさしい空間デザインを話し合う参加者

はじめに、災害時の子どもたちの状況や子どもにやさしい空間(CFS)の必要性や作り方、これまでの実施事例や実施時の具体的な工夫、日頃からできる備えや子どもとの関わり方のポイントなどについて、各登壇者がそれぞれの経験を踏まえてご紹介しました。その後、災害後の避難所に子どもにやさしい空間(CFS)を設置するシナリオで、参加者が具体的な空間デザインのシミュレーションをする演習を行いました。中高生から大人まで多年齢の参加者による演習は、短時間ではあったものの、それぞれのアイディアが詰まった具体的な空間デザインができあがりました。

参加者からは、「知らない語(CFSなど)を知ることができ、子どもたちとどう関わっていけばいいのかわかった」「子どもにはそれぞれの考えがあり自由にあそべるということがわかった」「(分科会から得られた学びや気づきを活かし)子どもだけのスペースを作りたい」「座学と演習のバランスが良かった」などの感想が寄せられました。

担当した高橋スタッフは、「この分科会を通じて、災害時にも子どもの権利をどのように保障するか、地域の中で様々な役割や年齢の方が日頃からともに考え備えることの大切さを、あらためて認識することができました」と語ります。ワールド・ビジョン・ジャパンは、今後も、子ども支援に関わる様々な団体・機関と連携し、災害時にも子どもの権利が保障される社会づくりに貢献します。

作成した空間デザインを発表する参加者
特定非営利活動法人災害時こどものこころと居場所サポート 本田涼子
益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 赤坂美幸
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 髙橋布美子



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分科会「私たちは本当に安全な団体?~セーフガーディングの取り組みへ」

企画担当:JANICセーフガーディング・ワーキンググループ
日時:11月17日(日)13:00~15:00

この分科会は、JANICセーフガーディング・ワーキンググループのメンバーである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、特定非営利活動法人チャイルド・ファンド・ジャパン、特定非営利活動法人ACE(エース)と協働で実施しました。

子どものセーフガーディングとは、団体のスタッフや事業活動が、子どもたちを危険や虐待のリスクにさらすことのないように努めるとともに、万一子どもの安全にかかわる懸念が生じたときは、しかるべき機関に相談・報告するという組織としての責任行動を指します。日本国内ではまだ一般的に認知されていませんが、国際協力の場においては、NGOワーカーによる被災者への不適切行為や、団体による管理対応のあり方を疑問視する報道が相次ぎ、セーフガーディングとして守るべき基準を見直すことが喫緊の課題として指摘され、国際的な潮流となっています。この分科会では、セーフガーディングとは何か、参加者にその重要性について理解してもらい、各々の団体で取り組むきっかけになることを目指しました。

グループで話し合ったことを共有する参加者

まずセーフガーディングの概要説明と事例紹介を行った後、身の周りのセーフガーディングに関わる懸念や問題について、参加者同士でで共有していただきました。その後、主催者から「子どもと若者のセーフガーディングの最低基準のためのガイド(案)」の内容を説明し、最低基準に含まれる要素の一例である「行動規範」について概要と取り組み事例を紹介。総括として、各自が関わる組織や活動でセーフガーディングについて取り組みたい事などをグループで共有、それを発表して終了しました。

分科会の冒頭、参加者の中でセーフガーディングについて知っていた人は8人中1人だけでしたが、具体的な事例を聞いて「自団体の過去の経験や、他団体の経験として聞いていたこと、現在の活動の中で懸念として感じていることの中にセーフガーディングの問題が潜んでいることが分かった」「グループワークで問題を共有することで、皆同じ問題意識を持っていることが分かった」というフィードバックがありました。

分科会の様子
参加者が関わる団体には、まだセーフガーディング・ポリシーは制定されていないため「自団体でまず行動規範を作りたい」というコメントがあった一方、「地方の小さな自治体のNPOにとっては遠い話だと感じる。最低基準をどのように展開すればいいのか」という質問もありました。

ワーキンググループで現在作成中の「子どもと若者のセーフガーディングの最低基準のためのガイド」は、2020年2月に完成予定です。今後はこのガイドを国内外で活動を行う団体に共有し、事業地の子どもや若者がより安全に守られる環境を確保できるようセーフガーディングの取り組みを広く周知していきたいと考えています。

子どもの権利とワールド・ビジョン



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