(2019.07.18)
急峻な丘陵地帯のためアクセスが厳しく、災害リスクの高い事業地で、学校の機能整備・安全性強化、防災の意識醸成に向けた基盤の形成、長期開発の中での「防災」への考慮・事業終了後の地域の担い手育成を進めるにあたり、同事業では、現地の実情や様々な課題に向き合ってきました。
加藤スタッフは、事業実施を通じて見えてきた課題として、国の情勢・状況の変化と、防災に関する人々の行動変容について話しました。
「2015年にネパール大地震が発生し、国をあげて防災についての意識が高まり、防災に係る法律・ガイドラインの整備が進みました。また、事業1年次の2017年から2018年にかけて実施された全国地方選挙を経て、ネパールの地方分権が大きく進展しました。地域から選ばれた代表者が地方行政の担い手となったことで、防災の活動主体としての地方行政の役割がますます重要度を増しました。このため、事業活動を通じて、新たに選ばれた地方行政の担当者との対話をより丁寧に行い、彼ら自身が防災活動の実施主体としてオーナーシップを持つことができるよう工夫を重ねています」
「一方、事業地では、国全体の防災意識の高まりから、防災に関する情報は多く、人々は防災の知識を持ってはいるものの、それが"自分ごと"になっておらず、日々の生活に"行動"として定着していないことが課題として見えてきました。また、いつ来るかわからない災害に備えることは、日常生活そのものが厳しい対象地域の人々にとって必ずしも優先度が高くはありません。人々が防災を"自分ごと"化し、"行動"につなげやすくなるよう、子どもや大人、地方行政官など、様々な対象に対して実践的・参加型の活動を増やしたことで、防災に関する人々の意識と行動が、少しずつですが確実に変化してきていると感じます」
ショウ・ラジブ教授からは、ネパールの防災政策の中での本事業の位置づけや意義について、次のようなコメントがありました。
「この事業は、ネパール極西部の交通アクセスが厳しい場所、且つ災害リスクは高いが大きな災害は未経験の地域で、学校と地域の防災力向上に取り組んでいる。様々な困難がありながら、本当に必要とされているところで支援を行っており、草の根のNGOならではのとても意義ある取り組みです」
「ネパールでは学校の数が少なく、地域の中でとても大切な場所。そこで防災活動を行うことは地域へのインパクトが大きい。子どもの頃に学んだことはずっと頭の中に残るので、防災教育は将来への種まきとしてとても重要です」
「現地を訪問した際に見た、この事業のファシリテーターの活躍が印象に残っています。学校や地域の人々、行政官も上手に巻き込んで地域全体の防災の取り組みを進めていました。女性のファシリテーターで、地域のことを良く知っており、現地の人々からの信頼も厚く、ワールド・ビジョンは良いパートナーを得ていると感じました。このようなChange Agent(変革の担い手)の存在が防災の取り組みには不可欠です」
参加者からのご感想の一部をご紹介します。
・現地でどのような活動がなされ、どういう点が困難なのか、どういう変化があったのかなどが詳しくわかりました
・日本で当たり前と思っていることを根付かせることの意味がよくわかりました
・種をまく作業の大切さをあらためて感じました。自分にもできることを考えたいと思いました
・学校防災について詳しく知ることができた
・意識を変えるということの大切さは、日本の防災にも学ぶべきものがあると思いました
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました!