(2023.12.01)
世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン(WV)は、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)に先立つ2023年11月28日、報告書『Rising Storms -Climate Impacts on Conflict, Community Tensions and Hunger(勢いを増す嵐:紛争、コミュニティ内の緊張、飢餓への気候の影響)』を発表し、気候変動が紛争や飢餓、人の移動・移住にもたらしている影響について、その影響を受けている地域に住む人々の声や意見を明らかにしました。
低中所得国9カ国で暮らす回答者の86%が「気候変動は自分たちのコミュニティにとって深刻な課題だ」と答え、57%が「気候変動は飢餓/食料不安のリスクを増大させた」と回答しました。また、6割にのぼる回答者が、水不足、汚職、移動・移住などが悪化・加速化されることで「気候変動がコミュニティ内の争いを悪化させている」と感じています。
WVのグローバルな飢餓対応責任者でCOP28に参加するメリー・ンジェリは、「この報告書は、地球を守るための行動を起こさなければ、課題は増える一方であることを憂慮させるもの。子どもたちの未来のために地球を守らなければ、世界は温暖化するだけでなく、より血にまみれ、より飢餓に苦しむことになる」と、COP28での指導者の具体的行動を求めています。
本調査は、ワールド・ビジョンが活動する9カ国の2,716人を対象に実施しました。現地調査で得られたデータにより、気候変動が紛争や飢餓・食料不安にもたらしている影響が一般に考えられているよりも広範囲であることが明らかになりました。
調査対象となった地域は、その地域を管轄する各ワールド・ビジョン(WV)事務所のキャパシティ、気候や紛争、飢餓に関連する活動実績、地理的な広がりを考慮して選ばれました。
各WV事務所が自国内で調査対象の地域を特定したため、得られたデータはその特定地域に関する記述であり、その国全体に関する記述ではありません。
特定の地域は下記の通り:
ブルキナファソの中東部地方、コンゴ民主共和国の上カタンガ州とルアラバ州、イラクのアンバール県、パプアニューギニアのブーゲンビル島、スリランカのプッタラム県。エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの都市、農村、先住民コミュニティから得られたデータは、乾燥回廊としてグループ化しています。
2023年6月から7月にかけて調査設計と調査手法の開発が行われ、8月から9月にかけてデータ収集が実施されました。
報告書全文はこちら(英文)
「この調査で、国際社会が何十年にもわたって何もしてこなかった代償が浮き彫りとなりました。2023年は史上最も温暖な年になる見込みで、紛争や飢餓を目に見えて悪化させています。気候変動により、特に農民や牧畜民は信じ難いほど脆弱な立場に置かれており、収入源をめぐってコミュニティ内には緊張が走っています。ますます脆弱になった人々は、放牧地や食料、安全を求めて移住せざるを得なくなっています。今月開幕するCOP28で指導者たちは行動を押し進めることが必要です」
「この報告書は、地球を守るための行動を起こさなければ、課題は増える一方であることを憂慮させるものです」と、ンジェリは述べます。
「コミュニティが気候変動の影響と闘う中で、家を失ったり、紛争が激化したりすると、人々は環境に悪影響な対策に頼らざるを得なくなります。回答者の約3分の1の人が『気候変動により自分たちのコミュニティで森林破壊が進んだ』と回答しました。作物の収量が減少したことで、人々は菜園を開拓するための土地を探したり、家族を養うために鉱業で働くようになっています」
「高所得の国々は、脆弱なコミュニティが気候変動に適応できるよう、環境を悪化させたり、紛争を激化させたりしない方法で資金提供の約束を果たす必要があります。他方、温室効果ガス排出量を抑制し、平均気温の上昇を1.5℃以下に抑えるための役割を確実に果たす責任は、すべての国にあります。平均気温の上昇はすでに1.1℃を超えています。子どもたちの未来のために地球を守らなければ、世界は温暖化するだけでなく、より血にまみれ、より飢餓に苦しむことになるのです」
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キリスト教精神に基づき、貧困、紛争、災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。
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