【6/20は世界難民の日】支援金はウクライナ危機へ集中、世界の難民・避難民が飢餓、暴力、死亡率上昇に直面しています
(2022.06.15)
世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョンは、世界難民の日に際して、報告書『Hungry and unprotected children::The forgotten refugees(食べ物も保護もない子どもたち:忘れられた難民)』を発表しました。同報告書では、世界11カ国の難民の生活、とりわけ子どもたちの生活が、過去2年間で著しく悪化していることが明らかになっています。
概要
- 難民・国内避難民の82%が、子どもたちが生きるために必要な食料、医療、家賃等、基本的なニーズを満たすことができていません。
- 4人に1人が家族を失い、その死因のほぼ半数が新型コロナウイルス感染症によるものでした。
- 生き抜くことに精一杯な難民の家族のための資金が、ウクライナ危機への支援金に充てられています。
※報告書全文はこちら(英語)
報告書『Hungry and unprotected children::The forgotten refugees(食べ物も保護もない子どもたち:忘れられた難民)』は、シリア、南スーダン、ベネズエラ等の国から逃れた難民と、国内にとどまり避難生活を送る国内避難民を対象にした調査の結果を明らかにしています。それによると、難民・国内避難民の82%が食料、医療、家賃等、子どもたちが生きていくために必要な基本的ニーズを満たすことができていません。また、回答者の3分の1以上(35%)が、成長期にあるはずの子どもたちの体重が過去12カ月間で減少したと報告しています。
ワールド・ビジョンの総裁/最高責任者、アンドリュー・モーリーはこう述べます。「世界中のぜい弱な国の子どもたち、その中でも最も弱い立場にある難民や国内避難民の子どもたちが、壊滅的な飢餓の波に直面しています。ワールド・ビジョンのスタッフは、すでにそうした場所に拠点を置き、今この時も支援活動を行っています。しかし、食料価格の高騰や、気候変動、紛争、新型コロナウイルス感染症の致命的な影響でコミュニティが疲弊する中、命を救う活動を続けるには、さらなる支援と資金が緊急に必要です」
アンドリューは続けます。「ベネズエラ、シリア、ウクライナの住み慣れた家から逃れた少女や少年から聞いた話もそうですが、それぞれの話は悲痛な内容で、家族は不確実性、飢餓、暴力の渦に巻き込まれています。世界難民の日に、私たちはこの壊滅的な状況にあるすべての子どもたちに寄り添い、子どもたちが神様から与えられた可能性を開花させて、豊かないのちを生きられるよう、全力を尽くします」
また、難民の子どもたちの安全も脅かされており、多くの子どもたちが緊急に必要とされるサービスを利用できないでいます。「子どもの保護」に関しては、その訴求額に対して世界全体でわずか4%の資金しか満たされておらず、人道支援のほかの分野と比較しても最も資金が不足しています。そして今、その分野の支援ニーズが高まっています。難民の子どもたちの半数が安全な避難場所を利用できず、44%が子どもの保護に関するサービスを受けられず、2021年と比較すると13%増加しています。多くの難民や国内避難民の子どもたちは、安全な環境も、教室で学ぶための支援もなく、教育の機会を逸しています。多くの家族が、子どもたちを学校に通わせるだけのお金がないと報告しており、その割合は2021年と2022年を比較すると倍増しています。
ワールド・ビジョン・インターナショナルで人道支援部門を率いるディレクター、ジャスティン・バイワースは次のように述べます。「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの時には、世界中の家族が、学校の閉鎖によって子どもが教育を受けられないことを心配していました。しかし、裕福な国のほとんどの子どもたちの学校は再開し通常の生活に戻ったため、その心配は多くの人にとって長く続くものではありませんでした。しかし残念ながら、数百万人の難民の子どもたちにとって、教育は過去の幻想となり、二度と教育を受けられない子どもたちが出てくるかもしれません。その代わりに、多くの子どもたちが児童婚と児童労働の厳しい現実に直面しています。この現実が不公平であることは明白です」
さらに同報告書は、多くの難民の健康状態が悪化していることも明らかにしています。調査対象者の4人に1人が、過去1年間に家族の一員が死亡したと報告しています。ワクチンへのアクセスは依然として不公平であり、死因のほぼ半数が新型コロナウイルス感染症によるものでした。パンデミック以降、世界の最貧国に供与されたワクチンは、世界で入手可能なワクチンのわずか1.4%に留まっています。子どもにいたっては、そのうちのごくわずかしか受け取っていないのです。
「世界で最も裕福な国々が、新型コロナウイルス感染症から移行しパンデミックが過去のものであると宣言する一方で、何百万人もの避難民たちがワクチンを入手できず、依然として高いリスクにさらされているのです。これは、彼らを助ける手段を持っている人々に対する、悲痛な告発です」とバイワースは言います。
「ワールド・ビジョンは、ウクライナ危機へ高い注目が集まることで、他の国や地域で避難生活を強いられ生き延びるために苦労を重ねる人々に、必要な人道支援金が届かない恐れがあることを懸念しています。資金拠出国は、既存の援助予算をウクライナに向け直し、資金を削減し、助成金の拠出を中止し、軍事支出を増やしています。*1 2022年3月、デンマークは、マリ、シリア、バングラデシュを含む最も差し迫った難民危機への20億クローネ(約2億8,000万米ドル)の人道支援金を、ウクライナ難民支援へと変更することを発表しました。*2 英国はこれまでに、ウクライナの差し迫った人道ニーズを満たすために2億2,000万ポンド(約2億7,600万米ドル)の支援金の充当先を変更しました。*3 世界がウクライナから逃れてきた人々を支援するために手を差し伸べるのは当然ですが、私たちは政治力を持つ人々に対して、年々状況が悪化し続けている世界中のすべての難民・国内避難民の生活を、全体として優先的に取り組むよう要請します。
私たちは、世界中の難民を支援するために割り当てられている資金が、ウクライナから逃れてきた人々に流用され、難民キャンプで必死に生きている子どもたちから必要な食料や保護といった支援が奪われていることを懸念しています。どの国から逃れてきたかに関わらず、すべての難民は支援を必要としており、その資格もあります。すべての難民が必要な支援を受けられるよう、すでに約束されているものを再配分するのではなく、新たな資金を拠出するよう資金拠出国に要請します」とバイワースは訴えています。
ワールド・ビジョンとは
キリスト教精神に基づき、貧困、紛争、災害等により困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGO。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。詳しくははこちら
本件に関する報道関係者からのお問合せ先
特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
広報担当:市山志保 【電話】090-6567-9711 【Email】shiho_ichiyama@worldvision.or.jp