ケニアの母子支援活動「Mother to Mother SHIONOGI Project」包括的な取り組みの成果を公表 ~マサイ族の母子の健康改善に貢献~

(2022.03.16)

塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)と国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン(事務局長:木内 真理子、以下「WVJ」)は、2015年10月に開始したアフリカの母子の健康を支援する「Mother to Mother SHIONOGI Project」の第一期事業*1(以下「本事業」)の成果を公表したことを、お知らせいたします。
ケニアの母子支援活動の成果報告会(2022年3月16日開催)にて。左から、塩野義製薬 取締役副社長 ヘルスケア戦略本部長 澤田拓子氏、塩野義製薬 ヘルスケア戦略本部 CSR推進部 谷由香利氏、WVJ事務局長 木内真理子、長崎大学名誉教授 一瀬休生氏


新型コロナウイルス感染症が国際社会に大きな影響を与える中、途上国における医療アクセスは益々困難な状況下にあります。ケニア共和国では、妊産婦死亡率は日本の68倍*2、5歳未満児死亡率は日本の22倍*2と、SDGs目標3の達成に向けて未だ大きな課題が残されており、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた具体的な取り組みが求められています。

本事業はケニア共和国ナロク県イララマタク地域で行ってきました。同地域は遊牧民のマサイ族が多く暮らす地域で、保健施設や医療サービスの質・量の不足、地域住民の保健に関する知識不足、自宅出産の慣行などの課題を抱えていました。本事業を通じて医療施設・水衛生環境のインフラ整備や地域保健人材・住民への教育を実施することで、マサイ族が医療サービスの重要性を理解し、診療所への来院者数はプロジェクト開始前と比較して年平均1.8倍に増加しました。また、2018年からは介入の科学的評価のためWVJと国立大学法人長崎大学 熱帯医学研究所が連携し、「5歳未満児の健康改善と発達、妊産婦の健康改善に向けた疫学調査」を実施しました。調査の結果から、水衛生環境の改善を中心とした保健・栄養・幼児教育の包括的な取り組みを通じて、本事業が母子の健康改善に寄与したことが明らかになりました。

事業の成果

1.医療アクセス向上

保健施設での分娩割合*a(専門技能者の介助含む)は12倍に増加しました。生後12か月から23か月幼児の予防接種*3完遂率*aも改善し、より多くの方が医療サービスを受けられるようになりました。



2.水衛生環境改善と住民の行動変容
水供給施設の整備により、乾季における井戸へアクセスできる世帯は、9%から36%*bと4倍に増加しました。また住民への衛生教育を通じて、水源と周辺の家庭における大腸菌の検出頻度は66%改善*b、石鹸を使った手洗いを行う世帯の割合は33%から69%*aと2倍に増加し、完全母乳哺育の割合は65%から78%*bと1.2倍に増加しました。


3.まとめ
水衛生環境の改善を中心とした保健・栄養・幼児教育の包括的な取り組みを通じて、子どもの下痢症有病率(28%から12%*b)、発育障害率(37%から30%*b)、消耗症率(25%から15%*b)の改善に繋がりました。

出典:ワールド・ビジョン事業評価結果(a)、長崎大学研究調査結果(b)

本事業の疫学調査の結果は論文公表予定であり*4、今後ケニアの母子保健政策や事業に活かされることが期待されます。

2020年4月から開始している第二期事業では、ケニア共和国キリフィ県の3つの診療所を対象に支援しています。*5 その1つであるリマ・ラ・ペラ診療所では、安定した医療サービス提供を目指し、パナソニック株式会社による「LIGHT UP THE FUTUREプロジェクト」*6協力を得て、太陽光発電システムの設置に取り組む予定です。

本プロジェクトは、今後も分野横断的なパートナーシップにより、それぞれの強みを活かし、ケニアにおける医療アクセスの向上とUHCの達成に向けて取り組んでまいります。

以 上

活動成果を報告するWVJ事務局長の木内

塩野義製薬株式会社について

塩野義製薬は、取り組むべきマテリアリティ(重要課題)として「医療アクセスの向上」を掲げており、AMR治療へのアクセス向上への貢献、アフリカでの母子保健支援などの活動を行っています。外部パートナーとの連携も含めた取り組みを強化し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事の解決に取り組んでいます。
詳細については、https://www.shionogi.com/jp/ja/をご覧ください。

ワールド・ビジョン・ジャパンについて

ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて開発援助・緊急人道支援・アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGOです。国連経済社会理事会に公認・登録され、約100カ国で活動しています。日本事務所は東京都中野区です。
詳細については、https://www.worldvision.jpをご覧ください。

参考

*1.プレスリリース:2021年8月3日
第一期事業ナロク県イララマタク地域の支援について ~ケニアの母子支援活動「Mother to Mother SHIONOGI Project」 診療所の県政府へ引き渡し完了~

*2.The State of the World's Children 2021 On My Mind: Promoting, protecting and caring for children's mental health.(UNICEF)

*3.予防接種の種類:BCG、経口ポリオワクチン、三種混合ワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチン、麻疹・風疹ワクチン

*4.Wandera et al. IMPACT OF INTEGRATED WATER, SANITATION, HYGIENE, HEALTH AND NUTRITIONAL INTERVENTIONS ON DIARRHOEA BURDEN AND AETIOLOGY IN A RESOURCE-CONSTRAINED SETTING IN KENYA: A CONTROLLED INTERVENTION STUDY
Tropical Medicine and International Health (submitted)

*5.プレスリリース:2020年4月1日
ケニア共和国キリフィ県における新たな母子保健支援事業の開始 -医療アクセス改善に向けた「Mother to Mother SHIONOGI Project」第二期事業の開始について-

*6.パナソニック株式会社 LIGHT UP THE FUTUREプロジェクト 
https://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/solution/power.html

お問合せ先

塩野義製薬ウェブサイト お問い合わせフォーム:
https://www.shionogi.com/jp/ja/quest.html#3.

特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン
広報担当:市山志保 【電話】03-5334-5356 【Email】shiho_ichiyama@worldvision.or.jp