2012.06.13
5月18日と19日の2日間、アメリカでG8サミット(キャンプ・デービッド・サミット)が開催されました。ワールド・ビジョン(以下、WV)はG8諸国が発表した「食料安全保障および栄養のためのニュー・アライアンス」を歓迎します。
WVは2009年イタリアのラクイラで開かれたG8サミット以来、栄養と食料の安全保障についての約束の実行をモニタリングしてきました。今年も、世界中のWVが、子どもたちを救うためのG8サミットにするための働きかけを行いました。食料の安全保障や栄養がサミットの議題の中心として重要視されるとは当初考えられていませんでした。しかし、WVを含むNGOの政府への働きかけが影響力を発揮し、ニュー・アライアンスの中に栄養不良を解決する方策を加えられることになった、と米国政府のシェルパ(G8首脳の個人代表)は、語っています。
オバマ大統領も、サミット前の演説で、栄養への取り組み拡充(Scaling Up Nutrition)、女性の妊娠から子どもの2歳の誕生日までの1,000日間における栄養向上が大切であることなど、WVが他のNGOとともに訴えてきたことの重要性を認め、食料の安全保障を在任期間の優先課題とすると述べました。クリントン国務長官、アフリカ各国首脳、イギリスおよびカナダの閣僚、そして、ニュー・アライアンスを宣言するために集まった多くの企業のリーダーも、食料安全保障や栄養問題の重要性を認めています。
今回のG8サミット開催前、日本でも、WVの政策提言を、ご賛同くださった5,080名の署名とともに日本政府に提出しました。皆さまの思いと行動によって支えられた、一つひとつの働きかけが、世界規模でつながり、新しい約束につながる力となったことを心から感謝いたします。
1. ラクイラ食料安全保障イニシアティブについて
今回G8諸国が、2009年イタリアのラクイラ・サミットで表明されたこの約束を達成することを、確認したことについては評価します。しかし、2012年の期限まで数カ月となる中、具体的な実行計画がつくられていないことは課題です。2012年以降についても食料の安全保障に対してラクイラ・イニシアティブと同程度の資金援助を維持することを必要であると考えます。
2. 食料安全保障と栄養支援の強化
栄養への取り組み拡充(Scaling Up Nutrition: SUN) および妊娠から子どもの2歳の誕生日までの1,000日間の大切さを肯定する、G8諸国の栄養改善への支持を歓迎します。今後10年で5,000万人を貧困から救い出「ニュー・アライアンス」という約束がなされ、政府と民間セクターが協力して慢性的な飢餓と栄養不良を解決するという、新しい方向性が示されました。しかしながら、栄養に関する具体的な目標や実行計画がなければ、「食料安全保障および栄養のためのニュー・アライアンス」や食料の安全保障の中心に栄養が置かれることは困難です。
「食料安全保障および栄養のためのニュー・アライアンス」を達成するために、企業は、30億ドルをアフリカにおける食料安全保障と栄養に投資し、政府に協力する約束をしました。それと同時にタンザニア、ガーナ、エチオピアは、食料生産向上への課題である農業および土地政策への改革を約束しました。しかし、この30億ドルの民間支援が、最も弱い立場にある子どもたちや地域にどれだけ直接の効果をもたらすことができるか、また、企業がどこまで責任を取ることができるかについても情報が不足しているため、その実効性が確実ではありません。
3. 説明責任について
G8サミットの開催前1カ月までにG8の過去の約束に関する「説明責任報告書」の公表することを求めていましたが、サミット終了の翌日に公表されました。したがって、その内容について市民社会が十分な話し合いをすることができませんでした。各国の資金拠出の約束と実際との間に格差があることから、報告書がサミット後にのみ公表された理由と考えられます。
今年も1億7,000万人の子どもたちが栄養不良による発育不良で苦しんでいます。遅れは許されません。「農業生産や経済発展で今後10年の成功を計るのでなく、子どもたちの生存、成長そして健康で計るべきである」とWVアドボカシー・グループの副代表のクリス・D.H.は述べています。
6月18日から19日にはメキシコでG20が開催されます。WVでは子どもたちの命を救うために、栄養と食料の安全保障の優先化について継続して政府に対して訴えていきます。
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