第10回国連人権理事会で、ワールド・ビジョンスタッフが提言を行いました

2009.03.18

コミュニティの診療所で3歳のシラジ君を診察し、「元気になったね。熱もないようだ。」と伝える医師。栄養不良による下痢や体力低下に苦しんでいたシラジ君は、ワールド・ビジョンの支援するこの診療所で、診察と投薬、栄養指導などを受け回復しました。

ジュネーブの国際連合欧州本部で、3月2日~27日まで国連人権理事会の第10回定例会合が開催されています。3月11日には、特定のテーマについて終日かけて話し合う"年に1度の日(annual day)"が、「子どもの権利」をテーマに開催されました。「子どもの権利」をテーマにした"年に1度の日(annual day)"は、ワールド・ビジョン(WV)を含む子どもの権利に取り組むNGOの働きにより初めて実現したものです。
WVは、子どもたちの「健康・医療への権利」について意見を述べ、提言を行いました。

WVの人権問題の責任者であるジェニファー・フィリポーニッセンは、スピーチ冒頭で、「年間920万人の5歳未満の子どもたちが予防可能な原因により命を失っているという現実は、深刻な人権侵害です」と発言し、「途上国の脆弱な保健システムと、人々が清潔な水を得られないことや、栄養や衛生に関する基本的な知識を得られないという要因が重なり、予防・治療可能な病気で多くの子どもたちが亡くなっているのです」と指摘しました。
また、栄養不良の問題が子どもたちの死亡の3割以上に直接・間接的に関わっていることや、子どもたちが出生登録されていないことが、保健医療サービスを受けられない原因ともなりかねない問題についても提起し、さらに、適切な保健医療を受ける子どもたちの権利と、それを保障する国家の責任は、子どもの権利条約に明記されていること、そして、国際社会がミレニアム開発目標としてその達成を約束していることを挙げました。

ミレニアム開発目標の進捗が遅れているという世界銀行の報告や、このままの傾向が続くならば、ミレニアム開発目標の達成期限である2015年には、ミレニアム開発目標が目指す水準を430万人も上回る数の子どもたちが命を落とすことになりかねないとの推計(ユニセフ「世界子ども白書」2008年版)に触れて危機感を表明し、以下を提言しました。

カンボジアの子どもたち

1.先進国は約束した援助を拠出してください。特に、基本的な保健医療サービスへの支援を重点化し、この分野への支援を2010年までに総額15億ドルまで増額してください。
2.乳幼児死亡率は、農村部の貧困層の間で最も高くなっています。政府はコミュニティレベルでの保健医療サービスへの予算配分を増やし、全ての子どもたちが基礎的な保健サービスを受けられるようにしてください。
3.2007年1年間で、140万人の子どもたちが不衛生な水が原因となる下痢で命を落としました。「到達可能な最高水準の健康の享受」のためには、保健分野にとどまらない取り組みが必要です。政府はもっと危機感をもって安全な水と衛生環境の提供を行うべきです。
4.健康改善のためには、教育が重要な役割を果たします。政府は予防プログラムの一環として、栄養、出産間隔、感染症予防に関する教育を提供すべきです。また、人々の健康にかかわる政策、プログラムの管理、ガバナンスにコミュニティが活発に十分な情報をもって参加できる必要があります。

最後に、フィリポーニッセンは、昨今の経済危機を受けて、健康への権利を達成するための取り組みがおろそかになってはならないことを強調し、「特に、国家は、最低限の責任として、全ての子どもたちがアクセスできるような基本的な保健サービスを提供しなければなりません。」と述べました。


国連人権理事会とは、2006年3月15日に国際連合総会で採択された「人権理事会」決議により設置された、国連総会の補助機関です。国連としての対処能力強化を目指して国際経済社会理事会の機能委員会の1つであった人権委員会を改組・発展させて、新設された常設理事会です。
約1カ月にわたって開催されている今回の第10回定例会合では様々な人権問題が話し合われています。ワールド・ビジョンは、あらゆる問題に関して、「子どもの権利」の視点がもりこまれ、子どもたちに配慮した結論が会議で出されるよう働きかけを行っています。
会議の第2週(3月9日~12日)に、ワールド・ビジョンは、「子どもの健康への権利」の他、「食糧を得る権利」、「安全な水を得る権利」、また、人身売買の問題について提言を行いました。

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