(2022.09.29)
2022年9月13~27日にニューヨークで第77回国連総会が行われました。世界のリーダーが集まるこの機会に合わせ、様々なハイレベルイベントが開催されました。その一つ、「教育変革サミット(Transforming Education Summit: TES)」にワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)でアドボカシーを担当する柴田スタッフが参加しました。その様子をご報告します。
教育変革サミットは、基本的人権の一つであり平和や持続可能な開発の礎である教育が、グローバルな危機に瀕しており、世界中の子どもや若者の未来に壊滅的な影響をおよぼしているとの危機感に基づき開催されました。
教育変革サミット開催に向けては、2022年のはじめから、1年にも満たない準備期間において、様々なステークホルダーが参加する包摂的なプロセスが進められてきました。ユネスコ国際委員会による「教育の未来に関する報告書」と新型コロナウイルス感染症からの教訓を踏まえ、100以上の国における国内コンサルテーションや、世界レベルでの主要分野(テーマ別アクショントラック)に関する協議を経て、2022年6月には154名の教育大臣を含む1,800名以上が参加し、パリのユネスコ本部でプレサミットが開催されました。
これらの準備プロセスでの議論の結果、今回の教育変革サミットには以下の期待が寄せられました。
9月16日と17日には、9月19日に開催されるリーダーズデーに向けて「動員の日(Mobilizations Day)」と「解決策の日(Solutions Day)」がそれぞれ開催されました。
ユース(若者たち)が主導する終日のプログラムでした。全体会議や各セッションの司会やファシリテーション、基調講演、スピーカーなど、あらゆる役割をユースが務めました。また、各国の教育大臣をはじめとする閣僚や国連事務総長とユースの代表が、教育の変革に向けたユースの意義ある参加について対話を行いました。
最後には、サミットの最終日に表明される国連事務総長の「教育の変革に関するビジョン声明」に対するユースの意見として「ユース宣言」が事務総長に提出されました。
このユース宣言は、2022年6~8月にかけてユースが主導して協議・収集された教育の変革に関する意見・提言等がまとめられています。加えて、ソーシャルメディアを通じて行われたオンライン調査などをもとに作成されました。世界中で推定450,000人のユースがこのプロセスに貢献したとされています。
ユース宣言の重要なポイントは以下の3点です。
変革が必要とされる、下記の5つの主要分野(テーマ別アクショントラック)に関連するイニシアチブを、終日議論しました。
それぞれについて、各国政府、国連機関、国際機関、NGO、民間企業、ユースなどの様々なステークホルダーにより、50近い分科会が開かれました。
一つひとつの分科会は、政府と国際機関とNGOや、政府と民間企業とユースなど、複数のステークホルダーで開催されました。
最後には、5つのテーマ別主要分野それぞれの振り返りが共有され、議論の成果と次のステップについてのまとめが行われました。
教育変革サミットは9月19日に閉幕しました。
閉幕にあたり、国連事務総長による「ビジョンステートメント」が公表されました。
この声明(ステートメント)では、世界的な危機に直面している現代において、以下の4つの分野で教育を変革する必要があることが指摘されています。
特に4の「教育への投資の増加」に関しては、教育支出は消費支出ではなく国家的投資であると考え方を転換する必要がある旨説明されました。
各国には教育支出総額の割合を増加することを、拠出国にはODAの15~20%を教育分野に割り当てることをそれぞれ求め、また、国際教育金融ファシリティ(International Finance Facility for Education:IFFEd)の設立を歓迎しています。
最後に、政治指導者、保護者、生徒、教師、そして一般市民が一体となって取り組み、行動することが必要だと締めくくられました。
今回の教育変革サミットでは以下の2点が印象的でした。
しかし、2日目に登壇したジェフリー・サックス教授が言及したように、ユース世代の提言に耳を傾けても彼らに力を与えないのであれば、彼らの行動を支援しないのであれば、これ以上残酷な話はありません。
「現在の世界が直面する地球規模課題の解決のために最も必要なことは教育」との発言が多くの登壇者によりなされました。そのためにも、教育を変革すること、ユースをはじめとする様々なステークホルダーと連携して変革を担っていくことが重要だと改めて思わされました。
ワールド・ビジョン・ジャパン
アドボカシー・シニア・アドバイザー
柴田 哲子