【G20大阪サミットに向けて】市民社会の声を伝えるC20

(2019.06.11)

前年の開催国アルゼンチン、本年のG20開催国である日本、翌年の開催国国サウジアラビアの市民社会代表と、阿部俊子外務副大臣が登壇しての対話

6月に開催されるG20大阪サミットに先駆けて、4月21~23日、市民社会が集い、『C20政策提言書』をG20サミット議長国である日本政府に手渡すことを目的としたC20サミット(Civil20)が東京で開催され、世界40カ国から830人が参加しました。安倍首相は外遊予定により当日参加できなかったため、これに先立つ4月18日(木)、市民社会代表が首相官邸を訪問し、C20政策提言書』を安倍首相へ直接手渡しました。

C20政策提言書』は、世界中の市民社会組織が協力し、10の社会課題別ワーキンググループ(反腐敗、教育、環境・気候・エネルギー、ジェンダー、国際保健、インフラ、国際財政の構造、労働・ビジネスと人権、地域から世界へ、貿易・投資)によって作成されました。C20サミット開催中は、日本政府担当者を招いて議論するシンポジウムや、各ワーキンググループ主催による分科会が開催され、活発な議論が行われました。このうち、ワールド・ビジョンのスタッフが登壇した、子どもに対する暴力撤廃、および、教育に関するセッションについて報告します。

民主主義と子どもに対する暴力撤廃

C20初日となる21日に開催された、SDGゴール16「平和と公正」に焦点を当てた「東京デモクラシーフォーラム」では、WVJシニア・アドボカシー・アドバイザーの柴田スタッフが登壇し、持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット16.2に掲げられた「子どもに対する暴力撤廃」の国際的な潮流や、多くの関係団体、日本政府とともに進めている取組みについて紹介しました。

柴田スタッフは、子どもに対する暴力撤廃に向けたグローバルな取組みの源泉は、今年30周年を迎える「子どもの権利条約」にさかのぼることができること、その後、国連だけでなく市民社会や専門家など様々なステークホルダー(関係者)が取組みを重ねてきた結果、「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバル・パートナーシップ(GPeVAC)」の設立や国際会議の開催などに象徴されるように、近年、大きな動きを見せていることなどについて紹介しました。

また、このような世界的な取組みの大きな動きを受け、日本国内で市民社会が進めている子どもに対する暴力撤廃に向けた取組みとして、2017年からこれまでに行ってきた国際・国内アドボカシーの動きや公開セミナーについて紹介しました。
国際的には、2017年より継続的に、国連のハイレベル政治フォーラムの場において、国際機関や他国市民社会とともに「子どもに対する暴力撤廃」を訴えるサイドイベントを実施してきたこと、国内では複数回にわたり国会議員・日本政府・国際機関・専門家などを招いた公開セミナーを開催してきたこと、日本政府に対して行ってきたアドボカシーなどについて紹介しました。

その上で、子どもに対する暴力をなくすためには、マルチステークホルダー(様々な関係者)による対話が重要であると訴えました。

「子どもに対する暴力撤廃」のため、日本の市民社会が日本政府やグローバルパートナーシップとともに進めている活動について説明する柴田スタッフ


もっとも取り残されている子どもに教育を

22日には、C20教育ワーキンググループが主催した分科会「教育への資金拠出に関するG20の役割」に、世界各地の緊急人道支援の現場で活躍している緊急下の教育支援専門家マルコ・グラズィアが登壇し、世界でもっとも弱い立場にあり、取り残されている子どもたちに教育支援を届けるための資金の必要性を訴えました。

今 、紛争影響下にある35カ国に暮らす子どもたち7500万人が教育支援を必要としています。世界では、90%以上の子どもたちが初等教育にアクセスがあるにもかかわらず、難民の子どもたちに限るとその数字は50%となり、中等教育では22%に過ぎません。さらに、紛争影響国に生きる女の子は、そうでない場合と比べ、小学校に通えない割合が2.5倍近くになります(Education Cannot Wait(教育を後回しにはできない)基金)。マルコ・グラズィアは、2017年に世界で行われた人道支援全体のうち、教育分野に充てられた資金は3.5%に過ぎなかったこと、また、他のセクターは必要資金の65%が満たされたのに対し、教育は35%しか満たされなかったことを挙げ、緊急下の教育支援の優先順位をあげる必要があると主張しました。

【関連文書】
ワールド・ビジョン・ジャパンがG20大阪サミットへ向けて日本政府へ提出した政策提言書 【提言】紛争影響国の子どもの教育継続を支援してください

緊急下の教育支援の優先順位を上げる必要性を述べる、マルコ・グラズィア。アフリカ、中東などの紛争・災害の現場で豊富な経験を持つ

この分科会では、さらに、ODAによる教育支援の必要性や、公的資金の不足による教育の民営化が世界で引き起こしていることなどが問題提起され、以下2点を最重要の基本原則として訴えました。

1. 教育はすべての人にとって公正であること
2. すべての子どもたち、とりわけもっとも取り残されている子どもたちが、最低限12年間の無償で、安全で、質の高い教育を終了できるようG20各国が努力すること

この分科会に参加した外務省、駐日欧州連合代表部(EU)の方々からは、以下のコメントをいただきました。

外務省国際協力局地球規模課題総括課 齊藤順子課長補佐

「教育はSDGs達成や平和な社会の実現に重要な役割を果たすものと認識しています。G20各国や国際機関と連携し、途上国の教育の状況を改善できるよう議論していきます。G20では教育に焦点があたることもあり、教育への資金の増加にむけた努力をしていきたいです」

エロル・リーヴィ参事官 駐日欧州連合代表部(EU)
EU教育における包摂、公正、ジェンダー平等を重視し、資金拠出や各国の教育政策がより良いものとなるよう現在約100カ国を支援し、教育への資金拠出で国際社会をリードしています。引き続き最大の成果を出せるよう教育支援に注力していきます

G20大阪サミットは6月28-29日

C20は、政策提言書を通じて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にむけて、G20各国が具体的な行動を取り、過去に約束した方針を守ることを求めています。G20大阪サミットで発表される首脳宣言の内容に『C20政策提言書』で訴えたことが盛り込まれるよう、ワールド・ビジョンは他団体と協働し、引き続き政府への働きかけを続けています。


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