(2018.06.18)
6月6日、衆議院第二議員会館にて「国会議員のための世界一大きな授業」が開催されました。
これは、国際的な教育キャンペーン「世界一大きな授業」
「世界一大きな授業」キャンペーンは、2003年より毎年4~6月に世界100カ国で実施されており、昨年2017年には、日本では全国506校・グループ、計4万3,493人が「授業」に参加しました。
国会議員を対象とした今回の「授業」では、中学生・高校生が「先生」を務め、国会議員が「生徒」として開発途上国の教育事情や日本の教育援助の課題について学びました。
例えば、読み書きができないことを体感するアクティビティでは、教育を受けたことがない人、初等教育を受けた人、中等教育まで修了した人で、医療品などの説明書を理解できる範囲がまったく違うことを体験し、教育機会の不足が命や健康にも直結することを学びました。
また、国際協力の援助額を学ぶアクティビティでは、日本のODA支出純額は2016年には約1兆1,334億円と世界で4番目に多いにもかかわらず、基礎・中等教育への支援は、ODA全体の約1.9%に留まっていることをリボンの長さで「見える化」して学びました。
最後に「宿題」として、中学生・高校生より国会議員に対して、二国間支援では日本にとって利益の見込める国への投資となりがちであるため、国家間の関係を超えてよりニーズの高い人々に教育支援を届けるために、「教育のためのグローバル・パートナーシップ」などの国際機関を通じた「見えにくい支援」にも取り組んでほしい、と伝えられました。
開催当日は、超党派の国会議員24名が出席し、また外務省や学校関係者、教育機関などからのオブザーバーも多数参加しておこなわれました。
参加した議員からは、「見えにくい支援という、"一歩先のODA"も進めていく必要を実感した」といった声のほか、
「本当に困っている人は僻地にいる。アクセスの悪い、それこそ見えづらい場所にいる。そういった現状を変えるために、党派を超えて取り組んでいきたい」との意思表明、また、
「SDGsに関わっていると、途上国や先進国で共通する課題があると感じている。教師の育成など、国内でもしっかりやっていかないといけない」との意見も聞かれました。
「世界一大きな授業」で高校生も訴えたことですが、現在、世界には小学校に通えない子どもが6,100万人もいます。
学校に通えない理由は、通える距離に学校がない、農業や出稼ぎなど家計を担わなければいけない、紛争や災害などにより勉強する環境にない、教育を受ける重要性が認識されていない・・・などさまざまです。
特に、2,800万人にのぼる難民・避難民の子どもたちの中では、学齢期の子どものうち半数しか初等教育を受けられておらず、中等教育に至っては4人に1人となっています。
※ワールド・ビジョンジャパンでは、教育を通じて難民・移民の子どもたちの明日と取り戻す「Take Back Futureキャンペーン」を展開中です。
加えて、「女の子は学校に行かなくていい」といった教育におけるジェンダー格差もあり、危機状況下で教育を受けられない女子は、男子の2.5倍となっています。
また、世界中の成人の7人に1人、つまり7億5,000万人が読み書きをできず、その6割は女性です。
こうした現状を受けて、6月8~9日に開催されたG7シャルルボワ・サミット
宣言では、紛争や災害などの危機状況における「教育機会の喪失」を無くしていくことをはじめ、特に途上国の女子や女性の教育支援や職業訓練などのため、計38億カナダドル(約3,200億円)を拠出することとなりました。
援助資金は、日本・英国・ドイツ・カナダ4カ国、EUそして世界銀行の共同拠出によるもので、日本政府は向こう3年間で計2億ドル(約219億円)を拠出すると表明しています。ただ、カナダの拠出額4億カナダドル(約440億円)の半分は、今回の宣言で新規に計上された予算である一方、日本は既存の支援額を示したのみであることには留意が必要です。
それでも、紛争国における教育問題や、教育におけるジェンダー不平等を改善していく必要をG7首脳が一致して認識し、資金拠出を表明したことは大きな一歩と考えられます。
国際的な合意である「持続可能な開発目標(SDGs)」では、2030年までにすべての子どもが質の高い就学前教育、初等教育、中等教育を受け、大人の識字率も改善することを目標として掲げています。人々が質の高い教育を受けられるよう、ワールド・ビジョン・ジャパンでは日本の国内外で働きかけを続けていきます。