「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた取り組みが日本でも広く行われていますが、開発支援に自分も参加したいと思ったことはありますか? 学生のうちに支援の現場を体験したいと考えている若い方や、社会人であっても何らかの形で開発途上国に貢献したいと考えている方の中には、ボランティアとして国際協力に関わる機会を探している人もいるでしょう。
この記事では、そんな皆さまのために、海外、そして国内でできる開発途上国支援のボランティアについて解説します。
学世界中にボランティアを派遣している国際協力機構(JICA)は、ボランティア事業の目的として次の3つを挙げています(注1)。
1つ目の目的は、支援活動を通した現地の社会や経済への貢献です。一方、2つ目と3つ目の目的は、ボランティアに参加する本人や日本社会に良い変化をもたらすことですね。ここに表れているように、ボランティアは活動の場で完結するものではなく、本人の変化を通して日本社会にまで好ましい変化をもたらしうるものだと言えるでしょう。
開発途上国でボランティア活動に参加しても、根本的な課題の解決に貢献するのは難しいと考えて参加をためらっている人もいるかもしれませんが、ボランティアに参加する意味はそれだけではありません。活動を通して自分が成長し、身の回りの人々や社会に変化をもたらすための契機となる貴重な機会なのです。
いざボランティア参加を決意したら、自分に合ったプログラムを選ぶことが重要です。
例えば海外ボランティアの期間は、1週間以内の短期間のものから年単位の長期のものまでさまざまです。仕事をしていて参加できる期間に制約がある場合などは、まずは期間で候補を絞り込むとよいでしょう。その上で、関心のある活動内容や活動地域に合致するものを探しましょう。将来のキャリア形成につなげることを考えている場合には、希望するキャリアに関連するボランティア活動を選ぶといいでしょう。
海外ボランティアだけでなく、国内で国際NGOなど支援機関の活動を支えるボランティアもあります。仕事や学業と並行して長期的に取り組みたい場合は、こうしたものを積極的に検討してみるのがいいでしょう。
近年、イギリス発祥の「ギャップイヤー」という制度が世界的に拡大し、日本でも注目を集めています。これはもともと、高校卒業から大学入学までの間に1年ほど間を置いて、その期間にボランティアやインターンなどの課外活動を経験するものでしたが、近年アメリカなどでは大学卒業後に取得する例も増えています(注2)。ギャップイヤーには、大学中退率の低下や大学での目的意識の明確化、職業観の醸成など、さまざまな効果があることが立証されています(注3)。
さらに、オーストラリアでの研究では、ギャップイヤー経験者は適応能力や企画力、時間管理能力などがギャップイヤー未経験者よりも高いことが統計的に示されています(注4)。
このようにギャップイヤーの効果が広く認められていることからも、高校生や大学生にとって、ボランティア経験は貴重な経験であると言えるでしょう。日本ではギャップイヤーはまだあまり普及していませんが、大学生なら休学という手段もありますし、夏休みなどを利用すれば、学業と両立しながら比較的長期間の海外ボランティアに参加することもできます。春休みや冬休みでも参加できる2週間程度のプログラムや、さらに短い1週間以内のものもあります。
もちろん、日本でボランティアやインターンとしてNGOの仕事を体験することもできます。NGOが主催する週末のイベントなどをボランティアとして手伝うだけでも、開発途上国をぐっと身近に感じられるようになるでしょう。
ヨーロッパなどの企業には、一定年数以上勤続している社員に長期休暇を与える「サバティカル」という制度があり、日本でもヤフー株式会社などが導入しています。サバティカルを取得してボランティアに参加する人もおり、会社を離れて過ごすことで会社への忠誠心が高まるといった効果が確認されています(注5)。
こうした制度を整備している企業は限られていますので、まとまった時間を作るのが難しい人が多いものと思われますが、ゴールデンウィークなどの連休に参加できる海外ボランティアプログラムや、週末を含めて4~5日程度で完結するプログラムもあります。このような短期間であっても、世界の課題を肌で感じ、異文化の中で人々への支援に関わることで、職場にはない学びや達成感を得られるでしょう。
もちろん、日本にいながら国際協力に貢献できるボランティアの機会もあります。職種によりますが、過去のキャリアを通して培った知識や技能を活かして国内ボランティアとして活躍する道もあります。
国際協力のボランティアというと、まず思い浮かぶのは、実際に海外に行って現地で行うボランティア活動ではないでしょうか。まとまった期間を確保する必要がありますが、開発途上国の人々と交流し、直接支援に関わるのは、現場でしか味わうことのできないかけがえのない経験です。
開発途上国でのボランティア活動に参加するということは、無償で時間を割いて奉仕するということですので、できるだけお金をかけずに済ませたい人も多いでしょう。
ですが、実は無料で参加できる海外ボランティアプログラムはほとんどありません。プログラムへの参加費が無料であっても、航空券代やビザ代、海外旅行保険料などは自己負担であることが一般的であるため、金額に差はあれどお金がかかるものなのです。
自己負担なしで参加できる海外ボランティアとして、JICAの海外協力隊があります。これについてはこのあと詳しくご紹介します。JICA以外が提供するボランティアプログラムは、基本的に全て有料と考えておくのがいいでしょう。
JICA海外協力隊には、2年間の長期のプログラムの他、1か月からの短期のプログラムもあります。「青年海外協力隊」という名称が有名なので、若者向けのプログラムだと思っている人もいるかもしれませんが、20歳から69歳までであれば参加できます。
応募条件は案件ごとに異なり、年齢や資格の有無、実務経験の年数などに条件がある場合もあります。渡航費や住居費はJICAが負担し、生活費や各種手当も支給されます(注6)。
ただし、JICA海外協力隊として活動するためには、適正テストや面接などに合格する必要があり、募集や選考の時期も決まっているため、決して気軽に参加できるものではありません。ボランティアというよりも職歴の一つと捉えて、しっかりと情報収集や準備をする必要がありそうです。
JICA海外協力隊以外の海外ボランティアプログラムの多くは、非営利団体が提供しています。日本の団体が現地の施設などと提携して手配しているものや、現地で活動するNGOが日本支部などを通して受け入れを行うもの、またNGOが旅行会社と提携して提供しているツアーなど、さまざまなものがあります。期間も活動内容も多岐にわたりますので、自分に合ったものを探しましょう。
たとえば、国際ボランティアNGO「NICE」の公式サイトを見ると、国内外のさまざまなボランティアプログラムが紹介されています。さらに「activo」というオンラインプラットフォームでは、豊富な情報の中から希望条件に合ったプログラムを検索することができます。「スタディツアー」や「インターンシップ」という名称で検索しても同様のプログラムが提供されていることもあるので、こうしたものも検討してみるといいでしょう。
ボランティアとして国際協力に貢献するためには、必ずしも開発途上国に赴く必要はありません。日本の支援団体の国内業務にボランティアとして参加すれば、それが開発途上国への支援につながります。
日本に拠点のある国際NGOなどの多くが、国内でのボランティアを受け入れています。
外務省などが発行している『NGOデータブック2016』によると、アンケート調査に回答した112団体のうち90%以上がボランティアを受け入れていました。さらに、受け入れボランティアの4分の3程度が国内ボランティアであることもわかっています(注7)。
JICAが運営している人材募集サイト「PARTNER」を利用すれば、こうした国内ボランティアの求人を検索することができます。関心のある特定の団体がある場合には、その団体のホームページでボランティアを募集しているか調べてみるといいでしょう。
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※このコンテンツは、2020年4月の情報をもとに作成しています。
※1 JICA海外協力隊:JICAボランティア事業の概要
※2 砂田薫:ギャップイヤー導入による国際競争力を持つ人材の育成 ウェブマガジン「留学交流」2012年3月号 Vol.12 p.1-3
※3 同上:p.10-11
※4 同上:p.4
※5 みずほ情報総研:長期休暇制度の導入により柔軟な働き方を促進する
※6 JICA海外協力隊:よくある質問まとめ
※7 外務省・JANIC(国際協力NGOセンター):NGOデータブック 2016 第8章4節